情弱注意報発令!総務省の『日本人の世帯平均貯金額』をみんなちゃんと読んでないよ。



インターネットを優雅にサーフィンしていると、「それホント?」みたいな記事にしょっちゅう出くわします。例えばこれ。

2016年、2人以上の世帯における1世帯当たりの平均貯蓄在高は「1820万円」ですって。
感覚的に考えておかしいですよね?

ちょっと統計をかじったことがある人はここで、「中央値は?」と質問します。

※中央値…全部のデータを順番に並べたときにど真ん中にくる数字のこと。

まあこれは正しいアプローチ。

しかし、それでも中央値は1,064万円
けっこう違いますがそれでも1,000万円オーバーです。

これを聞くとたいていの人はここであきらめますね。

※平均値とか中央値の違いについては別記事もありますので参考にしてみてください。

結局、

「俺が知ってる日本と違う」

「格差が広がってるなあ」

という印象論になっていってしまいます。

富裕層と貧困層の二極化については、まあそうだよねえとも思えるのですが、
本件、データはきちんと読みにいったほうがいいですよね。

とはいえ面倒だと思いますので、代表して(?)わたしが読んでみました。

▶ https://www.stat.go.jp/data/sav/2016np/pdf/gy01.pdf

家計調査年報(貯蓄・負債編)に書いてあること

さて、この『日本人の平均貯蓄額』ですが、元データは「家計調査年報(貯蓄・負債編)」というタイトルの資料に記載されております。

いくつかポイントをみてみましょう。

平均値とか中央値って、だれを見て言ってるの?

調査レポートそのものを見ればちゃんと書いてあるのですが、実はこの1,064万円という中央値は

「貯蓄が1円でもある人たちの中央値」

です。なので、貯金0の世帯がのぞかれているということ。

ちなみに貯金がない、という世帯は全体の1割強もあります。

貯蓄のない人も含めて中央値をとりなおすと996万円まで下がります。
いきなり1,000万円を切っちゃいましたね。

なお、平均値は分母が全世帯なので、そのまま変化なし。

けどまだ今ひとつ釈然としないですね。

「世帯」とはだれを指すのか?

次がコレ。

スタート地点が「2人以上の世帯」となっていますが、この調査では「2人以上の世帯」をさらに2つにわけています。

ひとつは、引退された方も含めた「2人以上の世帯」。
もうひとつは現役で働いている人に限った「2人以上の世帯のうち勤労者世帯」という区分です。

この調査を見ている人って、きっとほとんどが「現役の勤労者世帯」ですよね。

だとすると、

退職金をたんまりもらって悠々自適のひとたちと、ヒーヒー言いながら働いている社畜を一緒くたにするのは乱暴ってもんです。

では「勤労者世帯」に限った数値をみてみましょう。

まず平均値は、さっきの1820万円から1299万円にダウンします。いきなり3分の2。

でもって、

得意の中央値(笑)ですが、貯蓄あり世帯で734万円、貯蓄0の人たちも含めると690万円

まで落ちてきます。

だいぶ印象が変わってきましたね・・・。

「貯蓄」の定義は何?どこからどこまで?

実はもうひとつ確かめないといけないことがあります。

それがこの「貯蓄」という言葉。どういうものを思い浮かべますか?

一般的な感覚で多いのは「預貯金」と同じ意味で使っているパターンではないでしょうか。

ところが、この統計では、預貯金以外にもいろいろなものを「貯蓄」にカウントしています。
分類はこんな感じでした。

・通貨性預貯金(いわゆる普通預金とか)
・定期性預貯金(いわゆる定期預金とか)
・生命保険など
・有価証券
・金融機関外(タンス預金?あとは馬とかワインとかの投資?)

この中で、通常イメージする預貯金(通貨性+定期性)は全体の6割強ってところでした。

なので、通帳で確認できる「貯蓄」という意味では、さっき見た勤労者世帯の数字のさらに60%くらいになるということですね。

そうすると、金額としては貯蓄0の世帯も含めた中央値で400万ってところ。

ここまでくると、かなり我々の実感に近づいてきますよね。

やっぱり、貯蓄額の平均が1820万円っていうのは理屈の上では正しいかもしれないけど、だいぶミスリーディングなのでした。

まとめ

ニュースもブログも、センセーショナルにしてナンボ、みたいなところがあります。

受け手の我々としては、めんどくさいんですけど「ホンマかいな?」と思うことが大事。
もっと大事なのは、元ネタを探しにいくことです。

(面白いので、こういうのも時々発信していこうと思ってます。)

本日は以上です。最後までお読みいただきどうもありがとうございました!










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